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人とくるまのテクノロジー展2022

ダイカスト内製メーカー等編(2)

日進製作所、積層造形によるダイカスト用金型部品

自動車部品及びホーニング盤総合メーカーの日進製作所(京都)は内製するアルミダイカスト製品(写真39)や参考出品として積層造形によるダイカスト用金型部品「自由水管鋳抜き型」(写真40、41)を出品した。金型部品は試作、加工用として自社内に設置している金属3Dプリンタ(計3台)を有効活用するため始めたもので、早ければ今年度内の量産を目指している。

(写真39)

日進製作所のダイカスト製品

(写真40)

積層造形による参考出品のダイカスト用金型部品「自由水管鋳抜き型」

(写真41)

3Dプリンタ、軸立形MC等で試作加工に対応。

治具・検具・刃具を自社製作し、レスポンスのいい対応力に磨きをかける同社は、あらゆる試作加工に対応するため、近年、金属3Dプリンタ事業にも力を入れている。ドイツのEOS社のM290とCONCEPT LASER社のM2(2台)の計3台を保有し、レーザーを使用した粉末積層造形により素材試作からプラス機械加工、必要に応じ熱処理まで施し一貫対応している。

またダイカスト、熱間・冷間鍛造から機械加工・熱処理・組立まで手掛ける量産ラインは、原価低減へ向け、必要最小限の機能に絞った設備でラインを構築する姿勢を基本にしている。国内外でダイカスト生産を手掛け、国内では計7台の350㌧ダイカストマシンを主力にロッカーアーム等を製造するが、車の電動化が進展したことでコロナ禍真っ只中の2020年には同社最大となる800㌧マシンを導入し、受注間口を広げる戦略に打って出た。800㌧機を新設したのは、EVをはじめとした電動化の新規部品(ケース類、ヒートシンク等)を取り込むためで、コロナ後の本格的な需要増を見据えたためだ。

なお、同社ダイカスト拠点は国内の市島工場(兵庫県丹波市)と海外ではメキシコに650㌧機2台、350㌧機3台、中国・山東省で350㌧機10台を設置し稼働する。主に湯流れ向上、巻き込み巣の低減を目的とした減圧(最大減圧度マイナス95Kpa)と引け巣の発生を抑える局部加圧を合わせた製法で生産し、4輪向けロッカーアーム、油圧関連部品等を製造する。

木村鋳造所、超大型アルミダイカスト向け試作で存在感

自動車軽量化にともなう大型アルミダイカスト製品の需要増へ向け、2020年から国内で砂型鋳造とCNC加工によるワンストップ試作ソリューションを展開する木村鋳造所(静岡)はメルセデスベンツ向け「縦ビーム」(1400×450×320mm、重量7㎏、最小肉厚2mm)やメルセデスベンツCクラス向け「ショックタワー」を展示した(写真42)

(写真42)

メルセデスベンツ向け「縦ビーム」(手前)と同Cクラスの「ショックタワー」。

同社の成長戦略を担う新事業としてスタートした砂型鋳造とCNC加工による試作ソリューションは2018年からドイツの鋳造メーカー、グルネヴァルトと組んだ欧米市場での展開が始まり。海外の自動車メーカーにアルミ大型構造部品のエンジニアリングと砂型鋳造による試作を提供してきた。欧米での実績を踏まえ日本展開は2020年からになる。日本国内でも自動車部品の大型アルミダイカスト化への期待が高く、同社の新事業はその波に乗る形で大幅増員、設備増強など体制強化を現在図っている最中だ。コロナ発生を機に自動車メーカーの国内調達ニーズが強いことも影響し、「国内で完結するソリューションを構築する」方針を掲げ、設備面でも同社の研究開発を担う先端プロセス技術センター(静岡県伊豆の国市)に低圧鋳造機を導入し、試し打ちによる検証体制を強化する。ユーザー(自動車メーカー)への提案はより具体的なエビデンスが求められるためで、国内ダイカスト関連メーカーとの連携体構築も目指している。

なお、型締力5千~1万㌧に迫る超大型ダイカストマシンによる車ボディ部品の一体成形化は中国や欧米で盛んだが、日本国内で同クラスの巨大マシンを導入するには搬送も含め物理的制約もある。このため国内の大型アルミダイカストは既存の4千㌧クラスまでのもので用途開拓するのが現実路線となるが、木村鋳造所はこの制約の中で、「世界にはない独自進化を遂げるのではないか」とみる。ちなみに同社はダイカストマシン6500㌧クラスまでの金型設計は可能で、作り手となる金型製作、鋳造の各メーカーとの協業体制を築き、「大型アルミダイカストにおける日本発のイノベーションを起こしたい」と意欲をみせる。

大同メタル工業、タイ生産の電動化向けアルミダイカスト

大同メタル工業はタイにあるアルミダイカスト生産子会社2拠点の電動化向け製品を展示した。2020年秋に稼働した新設拠点、DMキャスティングテクノロジー(サムットプラカーン県)のHV用「PCUケース」、「モーターブラケット」(写真43)はダイカストマシン850㌧機で2021年から量産開始したものになる。DMキャスティングテクノロジーはPCUケースやモーターハウジングなど2~10㎏の電動車部品向け次世代ダイカスト工場として新設され、ダイカストマシン800~1250t機の中型機に特化したラインを組む。使用材料はADC12に特化し、溶解効率の向上へ集中溶解炉を設置する。

一方、1989年に設立、2017年に旭テックから買収したATAキャスティングテクノロジー(サムットプラカーン県)はエンジン、駆動系の内燃機関部品を主に電動化部品まで量産し、今回のブースでも800t機クラスのダイカストマシンによるBEV用「PCUケース」(写真44)を展示した。月産約1千個という少量で、DMキャスティング稼働前に受注した製品になる。

(写真43)

HV用「PCUケース」、「モーターブラケット」

(写真44)

BEV用「PCUケース」

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