人とくるまのテクノロジー展2019 ①ダイカスト編(4)

大豊工業、良品廉価のアルミダイカストを目指した取り組み!


 大豊工業のブースは「アルミダイカスト化による軽量・低コストへの貢献」をテーマにした構成。良品廉価へ向けたダイカストの取り組みを紹介した。薄肉化と切削加工レス化を実現した板厚0・4mmの開発品「ABSコンピューターケース」(平面度0・1mm)を展示〔写真10〕し、ダイカストマシンのダウンサイジング化ではトランスミッション用バルブボディの鋳造で従来の650tから350tへの低圧技術や、ハイサイクル鋳造では金型零冷却技術を活かしたトランスミッション用ピストン」(振れ精度0・05mm・内外径)をパネルで紹介した。


 さらに特殊鋳造法の量産品も展示。多部品同時鋳込みの「カムハウジング」〔写真11〕や置き中子鋳造(アンダーカット成形)の「デフキャリア」〔写真12〕、回転鋳抜きで湾曲形状の重力鋳造品のダイカスト化を実現した「コンプレッサハウジング」〔写真13〕を展示。またブースではデジタルエンジニアリングを基軸とした一気通貫でのダイカスト製品の設計・生産技術によるスピード化もパネル紹介した。



写真10
写真11
写真12
写真13

 京浜精密、アルミダイカストで鉄の領域を奪取へ!

 「鉄の領域をアルミダイカスト化する」 と意気込むのは京浜精密工業(神奈川県横浜市)だ。アルミダイカスト生産拠点を栃木と北海道、海外ではインドネシアに持つ同社はマルチマテリアル化にともない用途拡大を図る一環として近年、接合技術に力を入れている。「結合方法の革新」と銘打つのはアルミダイカストと鉄、樹脂成形品など異材料部品の塑性流動結合(プレスで加圧)で、コストと軽量化の両立を図れる特許取得済の技術だ。


 アルミダイカスト品の高強度、高精度な塑性流動結合として展示した「アルミダイカスト製ハウジング」〔写真14〕。現状、ボルト締結によりアルミダイカスト製ハウジングと鉄製ベアリングホルダを結合しているが、これを塑性流動結合できる構造とした。原理は鋼材に設けた溝にアルミダイカスト材を流動させて機械的噛み合いを得る構造。位置決め精度もよく、結合時に鉄系部材にかかる荷重が小さいことがメリットで、従来比で20%の軽量化、30%の低コスト化を実現した。


 アルミダイカストと樹脂成形品との塑性流動結合として展示した「乗用車用トランスファーハウジング」〔写真15〕は従来、アルミダイカスト製だった上部を樹脂化し軽量化を図ったもの。原理は樹脂部品に設けた溝にアルミダイカスト材を流動させて機械的嚙み合いを得る仕組み。これにより軽量化と気密性(内圧1Mpa以上)を確保できるのが利点だ。


 一方、アルミダイカスト単体の技術にも注力する同社は薄肉化の開発品として「四輪用トランスファーカバー」、「乗用車用オイルシール、リテーナ」〔写真16〕を展示した。四輪用トランスファーカバー〔写真17〕は肉厚1・5mm(リブ幅1・5mm)と50%以上の薄肉化と28%の軽量化を実現した。


 そのほか同社のユニークな技術〔写真18〕として従来のコールドチャンバー方式からセミホットチャンバー方式を採用した耐圧、高強度アルミダイカストがある。空圧機器部品や油圧機器部品を対象に鉄製部品からの代替を狙った技術になる。このセミホットチャンバー方式は低速射出の縦射出方式により、ブローホールが極めて少ないため高密度製品(熱処理可能)が可能となる。例えば「鉄製エンジンフット」(1・74kg)をアルミダイカストに置き換えると重量は55%減の0・79 kgを実現(T6熱処理実施)した。


 さらに円形部品の寸法精度向上を図るための技術として高真円度アルミダイカストがある。これはセンターゲート方式(3枚型、可動型と2つの固定型)を採用し、溶湯を放射状に均一に注ぎ込むことにより、円形部品の寸法精度が向上し、真円度0・05を加工レスで達成。ハイシリコンアルミ材使用による耐摩耗性向上が図れ、スプライン部及び歯型部の加工レス化を実現。用途としてCVT用やAT用のピストン、AT用ドラム、ピストン、ハブ、バランサーや高精度が要求される円形部品で活用できる。例えば「鉄製ハブブレーキ」(0・33kg)をアルミダイカストに置き換えると重量は55%減の0・18 kg、「鉄製ドラムダイレクトクラッチ」(2・35kg)だとアルミダイカスト化で重量は54%減の1・28kgを実現できる。


写真14
写真15
写真16
写真17
写真18

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