WEB SPECIAL

モノづくり復活

巣ごもり需要と世界的なデジタル化需要で

ハードとなるモノづくりが復活の兆し

耐熱性、複雑形状、量産性、リサイクル性を満たす素形材ニーズ急増


 今後のビジネスモデルはハードとなるモノで稼ぐ時代は終わり、サービスなど目に見えないもので稼ぐ時代といわれてきた。モノがあふれる時代には観光業など体験型ビジネスにお金が集まるといわれてきたが、コロナ発生にともなう巣ごもり需要が生まれ、サービスよりもモノが消費される回帰現象が起きている。外食や観光業など体験型ビジネスに資金投入する機会がなくなったことで、その分がモノ消費にお金が流れている。通常より「ちょっと贅沢を」といった消費思考が後押しし、食料品はいうまでもなく家電や自動車まで昭和を彷彿とさせる物欲(笑)が国内経済を下支えしている感じだ。自動車では半導体不足といった懸念材料が消えないが、中小企業庁、中小企業基盤整備機構による4~6月期の中小企業景況調査では製造業の業況判断DI4期連続で上昇した。例年にない注文の多さに設備更新と新規雇用さえ計画する動きがある。

輸出量も増えており、財務省による6月の貿易統計(速報)をみると自動車と車部分品等が増加し、輸出は前年比48.6%増の4カ月連続増を記録。また輸入は原粗油、非鉄金属等が増え32.7%増の5カ月連続増となり、その結果、差引額は輸出が輸入より3832億円上回り、2カ月ぶりの黒字となった。輸出品目別でみると全体の14.4%を占めた自動車は金額で2.8%増の10兆4338億円に上り、数量としては68%増の47万1814台と勢いがある。また全体の4.3%を占めた自動車部分品は金額が14.8%増の3兆906億円、数量は7%増の21万6523㌧、次いで全体の2.5%を占めた非鉄金属は金額が45.2%増の1兆7795億円、数量で6%減の12万4312㌧だった。一方、輸入では原粗油が全体の6.9%を占めた81.6%増で、全体の0.9%を占めた自動車部分品は金額が57.7%増の6464億円、全体の3.9%を占めた非鉄金属は98%増の2兆6562億円で、数量が41%増の29万8781㌧に上った。

貿易統計推移(ダイカスト新聞2021年7月30日号より)

足元のダイカスト生産量をみると5月は前年比で倍増の6万5千㌧、生産額も91%増と回復。過去最大の落ち幅をみせた前年5月(61%減)の反動からで、用途別では自動車をはじめ全般的に生産量が増えている。厚労省求人情報をもとに本紙で集計した7月の国内ダイカスト関連求人募集状況によると募集件数は前月比2%増の597件で、2カ月連続で増加した。採用数は4%増の1142人で2年4カ月ぶりに1千人台に乗った前月に続き1千人超えで、前年比でみると件数が2.3倍増、採用数が2.5倍増を記録している。募集件数を地域別でみると前月に比べ、中部東海地区は3.7%減の180件、関東(山梨含む)が3.4%増の154件、関西が1%減の67件に上り、県別では長野が埼玉に次ぐ第2位に浮上した。長野のダイカスターは精密部品関連を扱うところが多いこともあり、求人数に跳ね上がっているもよう。

(ダイカスト新聞2021年7月30日号より)

世界的に電動化とデジタル化にともなう新たな需要が広がりをみせており、なかでも精密部品関連の需要が旺盛で、この流れがダイカストをはじめとする素形材にも波及している格好だ。自動車部品では電動化と自動運転にともなう電子制御・通信関連、自動車以外でも電子・電気製品の種類や生産量は拡大の一途を辿り、住宅、インフラを含めたデジタル産業用途が拡大している。ダイカストをはじめとする素形材にとってはデジタル需要拡大を取り込めるチャンスが到来し、耐熱性、複雑形状、量産性の要求を満たす材料や成形へのニーズはかつてなく高まりをみせている。マルチマテリアル化のなかでアルミダイカストの特徴を活かせるフロンティアが拡がることが予想されるが、ここには高機能樹脂も需要拡大が見込めるとみられている。ダイカストメーカーにとってはリサイクル性など他成形に比べ優位性がある点を市場に訴えるとともに設計を踏まえた提案力が試される時代に入っている。

2021年8月7日配信