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部品事業が大化けする時代の到来


部品事業が大化けする時代の到来

2000年以降、自動車各社が汎用部品に対し、優先重要度の低い部品から共通化が進んできたが、徐々に独自ノウハウが詰まったエンジン、トランスミッション関連の重要機構部品もこの流れが進んでいる。これには内燃機関に取って代わろうとするEV関連の台頭が大きい。この流れからパワートレインの小型軽量化やコスト低減が実現できるeAxle(電動アクスル)も今後需要が急増することが予想される。

アイシン、デンソー等が進めるeAxleは駆動用モーター、インバーター、ギアボックス(減速機、デフ、ハウジング)が一体化したもので、欧米数社や一部日本メーカーが先行展開中だ。細かな調整が不要で低コスト、迅速にxEV開発が可能となるため、中国を中心に需要が高まることが期待される。2030年代には世界で1500万台との予想もある。なお、この「eAxle」は昨春にアイシン、デンソーの両社で設立した合弁会社「BluE Nexus (ブルーイー ネクサス)」(愛知県安城市)が開発・販売を担う。

クルマの重要機構部品さらには重要保安部品にはダイカスト製品が採用されることが多い。これら部品はクルマの性能以上に近年は安全性を左右する最重要な位置付けにある。この部分でリコールが発生することは完成車メーカーにとって致命傷になるため、品質管理は他の部品より厳しくなる。近年、検査負担増大に泣くダイカストメーカーが大変多いが、これもダイカスト製品の重要度が増していることの証でもある。ダイカストが適用される用途は軽量で強度・耐久性等が求められるといったクルマの基本を構成する。

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完成部品でもない一素形材製品のダイカストではあるが、クルマの性能、安全性を大きく左右する陰の重要部品でその存在感はいまだ大きい。それを物語るかのように完成車、大手部品メーカーが出願する特許の数をみれば一目瞭然だ。弊紙ダイカスト新聞でも毎月、最新の公開特許一覧を掲載しているが、その数が衰える気配は見られない。ダイカストは「溶湯を形にする」といったシンプルな現象ではあるが、解明できない、まだ見えない部分が非常に多い。科学の譬えに「宇宙の解明に較べ、地球内部(地底)の解明は全く進まずミステリー」といわれるが、ダイカストも似たような感じといえる。

完成車メーカーにとっては市場の多様化とグローバル生産体制の確保、電子化、安全装備等やるべきことが山積し投資額は増加の一途を辿る。さらに勝負の分かれ目ともいわれる電動化を軸とした次世代車の研究開発も巨額な投資が必要だ。業績好調なメーカーでさえ「(カネが)いくらあっても足りない」状態といわれる。こうした背景から欧米完成車メーカー各社は設備投資を身軽にし、アウトソーシング化する戦略をとる。世界情勢が一瞬に変化するなかでは自前主義を基本とした戦略ではリスクが高過ぎるからだ。

部品は完成部品といえどもあまり表に出ず、大手部品メーカーでさえ自動車業界では大きな存在感を誇るが、一般公衆には認知度がそれほどない。完成部品を構成するさらに下のサプライヤ―の存在感とはいわずもがなだが、今後は部品自体が単独で価値を主張する流れが醸成されつつある。欧米完成車メーカーは部品事業の選択と集中を強力に進め、「餅は餅屋に」と外注化と内製化の境界線が明確だ。この戦略に最近は日本メーカーも追随する方向にある。技術力と供給能力がある部品メーカーに受注が集中する流れになりつつあり、この流れを踏まえれば部品メーカーの伸び代は完成車メーカーより大きいといえる。完成車メーカーより部品メーカーの方が「大化けする時代」の到来だ。

(写真1)高車速と駆動力を両立し高効率化を実現した最高出力150kWの「シームレス2段変速高性能EVユニット」(モーター、インバーター、変速機)。

(写真2)駆動モジュール「eAxle」による「1軸デザインのコンパクトEVユニット」」(モーター、インバーター、減速機)。2つのプラネタリとデフをモーター径サイズ内に配置し、車両前後長方向をコンパクト化。磁石モーターにより出力密度は60%向上。

2020年9月3日配信