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人とくるまのテクノロジー展2022

ダイカスト内製メーカー等

2022年5月25日から神奈川県のパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA」展示されたダイカスト製品を2回に分けて紹介する。二回目はダイカスト内製メーカー等編。

九州柳河精機、水路部品へFSWと中空ダイカスト融合

 溶接と中空技術によるダイカストの用途拡大を図る、九州柳河精機(熊本)は2輪車体部品で培った中空化(製品内部が空洞となった形状)技術を水路系部品へ展開する取り組みを紹介した(写真26~29)

(写真26)

「中空ダイカスト製インバーターケース」

(写真27)

開発中のFSWと中空化技術を組み合わせた試作品。

(写真28)

「モーターケースFSW試作品(外周突き当て及び内周重ね合せ)」

 水路系部品へのさらなる対応力強化へ、現在開発中なのがFSW(摩擦攪拌接合)技術と中空化技術を組み合わせたものになる。低コスト化、大型化、複雑形状化によるモーターやインバーターユニットの冷却回路の形成に貢献できる技術として、CASE時代のニーズに応えた電動化部品と位置付ける 。

(写真29)

量産品のPHV向け「インバーターケース」は800t機で鋳造。

中空アルミダイカスト製品の「インバーターケース」では砂中子を使用することで冷却水路の一体成形を実現。ふたがないため製品高さが従来の127mmから94mmへ低くなり、エンジンルーム内への収納可能とした。Oリングやボルト締めを廃止することが可能となり、ふたの部分を削減したことで工程数削減、コストカット、軽量化、小型化、そして水漏れリスクを大幅低減できた。

CASE時代の電動化部品として中空技術と大型高難易度形状を実現し、量産化した「EV向け水冷方式インバーターケース」(D480×W420×H100mm、7.9㎏)もディスプレイで紹介した。ダイカストマシン1,650t機による鋳造で冷却フィン(H16×W2mm)になる。同インバーターケースは2つの技術を基に量産化にこぎ着けたものだ。その一つが高難易度形状技術で、金型キャビティ内のガス残りの最小化により複雑な高難易度形状の品質向上を図った。そしてもう一つが大型薄肉技術で肉厚1mmのオイルパン形状の成型技術を確立したことによる。

アルミダイカストの用途拡大へ、九州柳河精機は溶接と中空技術にいち早く可能性を見出し取り組んできた。その変遷をみると溶接可能な鋳造技術開発では1998年、ダイカスト製品内部におけるガス量の大幅低減を可能にし、それまで不可能とされてきた溶接可能なダイカスト部品を他に先駆けて量産化に成功、レース用2輪車に採用された。

一方、中空技術では2002年、ダイカストでは不可能とされてきた溶接可能な中空製品の量産化に成功。二輪車に採用され、軽量化とフレーム剛性確保という、いわば相反する特性を両立しダイカスト製法自体の自由度を大きく拡げた。この進展から4輪用サブフレームで鉄製プレス製法に代わり、ダイカストマシン1,650t機によりアルミ中空一体サブフレーム(8㎏)の量産化にも成功、鉄製より5㎏減、40%の軽量化を実現した。

また同社はダイカストの受注間口を広げるため、幅広い部品に対応する体制の一環として5種類のアルミ材料を使用している。強度を必要としない一般部品にはADC12材、強度を要する部品にはADC3材を適用するなど、部品特性に応じてアルミ材料を使い分けており、使用材料はADC12、ADC12(グレードアップ材)、ADC6、ADC3、SILAFONT36(シラフォント)がある。シラフォント材は欧州で開発されたダイカスト用合金で、ADC12と比較し、腐食性に悪影響を与える成分が少なく耐食性があり、強度にも優れる。不純物が少ないため熱伝導性がいいのも利点だ。さらに熱処理(T5)により強度をコントロールでき、欧州では自動車フレームへの採用例が多い。適用部品はホイールハブや電装品に使用される。

F・C・C、設計自由度で冷却効率向上のアルミダイカスト

クラッチメーカー、F・C・C(エフ・シー・シー、静岡)は電動化向けに冷却効率に焦点を当てたヒートシンクなどの薄肉精密アルミダイカスト製品を出品した。冷却効率向上を図るため開発したのは「ピン型水冷ヒートシンク」(写真30)になる。湯流れ解析シミュレーションを基に独自ゲート方案を設定。

表面積が広くなるようなピン形状を成形することで、高効率で複雑水路にも設定可能な設計自由度のある製品を実現した。ADC12合金により鋳造し、サイズはW142×D140×H60mm、ピン径は先端φ2.9~3.2。ピッチは5~7mm(複雑水路に設定可能)。

(写真30)

「ピン型水冷ヒートシンク」

次いで軽量化と冷却効率向上の両立を図った製品として、ハニカム構造を採用し、強度を併せ持つ薄肉アルミダイカスト製品を開発した(写真31、32)。ハニカム高さは10mm、ケース肉厚0.7mmと同社最薄の鋳造品で、ケース内外壁の抜き勾配ゼロを実現した。使用する高熱伝導合金HT-1はコンピュータやゲーム機など放熱特性が要求される部品に適したもので、ダイカスト用合金の中でも最高クラスの流動性を有し、薄肉部分にも湯が回るのが特徴。これらにより薄肉化をはじめ熱伝導時間短縮と表面積増による冷却効率向上、そして衝撃吸収構造による強度向上が可能となった。用途としてインバーターケース、バッテリーケースや非モビリティ向け放熱品等になり、薄い板厚、必要箇所には抜き勾配ゼロ、放熱フィンを同時に付与できるほか同社の電波吸収紙、ペーパーセラミックスとの組み合わせも検討可能だ。

(写真31)

ハニカム構造で強度を併せ持った薄肉ダイカスト技術。高熱伝導合金HT-1で、ケース内外壁の抜き勾配ゼロ。

(写真32)

ハニカム構造を採用した薄肉ダイカスト製品

(写真33)

モジュール・コンセプト「空冷ボディ・モジュール」

これらを組み合わせたコンセプトとして「空冷ボディ・モジュール」(写真33)も出品した。薄肉ダイカスト、ペーパーセラミックス、高機能シート、接合技術など同社コア技術を結集したコンセプト製品になる。ペーパーセラミックス技術は自由度の高い新たなセラミックス成形手法で、仕組みは抄紙時にセラミックス材料を配合したセラミックス材料充填ペーパーを高温で焼成することで、ペーパー内の有機成分が焼失するとともに材料が焼結しセラミックス化する。用途は全個体電池等が見込まれる。

京浜精密工業、離型剤レスの次世代車用ヒートシンク

アルミダイカスト生産拠点を国内外に持つ京浜精密工業(神奈川)はHVやPHV、FCV向けに環境にやさしい次世代のアルミダイカスト技術への取り組みを紹介した。その一環としてブースで披露したのは、高精度ヒートシンク部品の鋳造技術確立だ。離型剤レスの「車載用ヒートシンク」(写真34)は、ダイカストマシン350t機による1個取りで試作したものだ。

さらに次世代のアルミダイカスト技術として展示したのはPHV向け「電池パック用バッテリーブラケット」(写真35)。従来ひけ巣不良で困っていた製品だが、設備コンサル業者の対策技術等を取り入れ改善したという。ヘリウムリーク及びアルマイト処理の対応が可能だ。

(写真34)

離型剤レスの「車載用ヒートシンク」

(写真35)

PHV向け「電池パック用バッテリーブラケット」と手前はFCEV向け「センサー用カバー」。

同社のつくるダイカスト製品(写真36~38)は独自性が強く、時流に合わせた技術展開を行なっている。マルチマテリアル化にともない用途拡大を図る一環として近年、接合技術にも力を入れてきた。「結合方法の革新」と銘打つ塑性流動結合(プレスで加圧)はアルミダイカストと鉄、樹脂成形品など異材料部品をボルト結合から塑性結合に代え、低コストと小型・軽量化を図れる特許取得済の技術だ。塑性流動結合は、自動車をはじめとする各種機械部品において高まる低コスト・軽量化ニーズに対応するため、2013年に塑性変形能力の乏しいアルミダイカスト部品と鉄系部品の結合に独自開発した技術になる。エンジンのバルブリフト量をコントロールするアクチュエータハウジングで製品化し、約20%の軽量化と30%の低コスト化を実現。累計で約200万個超の納品実績がある。その後、アルミダイカスト部品と樹脂部品の結合技術も開発。樹脂部品に結合溝を設け、アルミダイカスト部材を流動させて機械的かみ合わせを得る原理で、下処理などを必要とせずに常温で、アルミダイカスト部品と樹脂部品の結合を可能とした。現在、銅まで異材間結合の範囲を広げ、軽量化部品・放熱部品への研究開発につなげている。

なお、京浜精密工業のダイカスト拠点は栃木(鹿沼、大田原)と北海道、海外ではインドネシアに持つ。栃木の製品はギア・コントロール部品、エンジン部品、ステアリング及びシャシ部品、北海道はエンジン部品、トランスファー部品、A/T/CVT部品、クラッチ部品、ステアリング部品を製造。

(写真36)

京浜精密工業の製品群

(写真37)

薄肉、塑性流動結合のアルミダイカスト製品。

(写真38)

塑性流動結合、高真円度のアルミダイカスト製品。

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