年頭所感
日本ダイカストマシン工業会
武田 倫治
2025年の新年を迎え謹んでお慶び申し上げますとともにご挨拶申し上げます。
平素より日本ダイカストマシン工業会に対する会員各社ならびに関係各社・各位の皆様方のご理解とご支援に厚く御礼申し上げます。
2024年を振り返りますと、元日に発生した能登半島大地震、翌日に羽田空港で日航機と海保機の衝突事故が発生、前年にコロナ禍を脱し国内が全体的に活況になってきたところが大きな災害で幕開けとなり、8月の宮崎沖地震で初めて南海トラフ臨時情報の発出、9月の能登半島で豪雨災害、年間猛暑日が過去最多を記録等、自然災害や環境変化に翻弄された年でした。また為替も円安基調で34年振りに160円/$を記録し輸入原材料高騰による物価上昇、賃金アップの明るい兆候もありましたが生産コスト上昇の一方で、価格転嫁が思ったほど進まない。国内市場を主とする生産者には厳しい状況でした。ダイカスト設備メーカーにおいても1-10月ダイカストマシン出荷台数は489台で前年同期比63台減。輸出台数減の影響ですが、インド向けが活況な一方、景気減速と中国メーカー台頭による中国向けの減少が主因です。
ダイカスト業界において最も関わりが深い自動車産業は数年前から100年に一度の変革期といわれ世界的にEVシフトが進む中、充電インフラの整備状況も関係し中国、欧米ではPHEV、HEVの拡大率がEVを上回る状況でEV化も一旦、踊り場状態になった年でした。とはいえ、世界的なカーボンニュートラル目標の実現や自動運転等、止められない潮流にEVは親和性が良く、拡大基調は今後も継続するでしょう。そうした自動車産業の状況を背景にテスラ社が始めたギガキャストによるボディ生産はコスト高なEVの生産性向上、生産コスト低減の工法として中国において急拡大し、日系自動車メーカーも検討を進めています。EVはICE車に比較しダイカスト部品が少なく、ダイカスト業界にとってEVシフトは由々しき状況ですが、ギガキャストの登場でEVにおいてもダイカスト適用部品や量が増える点で近将来に向けて明るい兆しです。11月に開催された日本ダイカスト展示会においても前回開催に比較し中国、欧米からの出展社・来場者も増加しギガキャスト関係の出展多数だったことは、それだけ注目を集めた事案だったと思います。ギガキャストは設備導入費が膨大で生産した部品の輸送費にも難があり簡単に導入可能な工法ではなく良品を得るための鋳造プロセスも発展途上と考えています。困難な工法であるがゆえに種々の課題解決が進めば、それらが新たな知見やノウハウとなって、ギガキャスト以外のダイカスト部品へ適用が進みダイカスト業界の発展に繋がるのではないかと期待しています。
今年は1月に米国大統領としてトランプ氏が就任し、従来から大きく政策変更をすることが予想され、またウクライナとロシアの戦争、中東の紛争も終結が見えずグローバルサプライチェーンに多大な影響を与え世界経済を揺さぶることになりそうです。先の見通しが困難な状況ですが、ダイカストの多様性を活かし業界の発展に寄与すべく関係者のご協力をいただきながら、ギガキャストを始めIoTを絡めた新たなダイカスト技術を情報提供していくつもりですのでご期待ください。
最後になりますが、今年が皆様方にとって実り多き年になりますよう心より祈念し、新年の挨拶とさせていただきます。