WEB SPECIAL

二極化する市場とものづくり


 


 成長期に比べ、成熟化した市場は二極化する傾向にある。上の層と下の層だけで中間層がなくなる構図だ。国内の自動車販売をみてもそれがわかる。比較的売れやすいのは軽などの小型車と輸入者を含めた高級車で、その中間となるラインナップは売れ筋から遠のく。成長期は中間層が膨張しけん引するが、中間層が育った後は一気に上下層への2極化が進む。多くの企業が中間層にターゲットを当て成長してきたため、成熟化にともなう二極化に戦略見直しを迫られているのが昨今だ。

一般的に製品ライフサイクルは導入期、成長期、成熟期、衰退期という4段階のステップを示す。成長期のキーワードは画一的な拡大、成熟期は多様化だが、現在は技術テンポがかつてなく加速し、先進国だけでなく新興国までこの成熟期に突入しようとしている。加えてIOTやロボットさらにAIの台頭により、製品ライフサイクルがシャッフルし、導入期、成長期、成熟期、衰退期が混在化するカオス常態化が今後の市場動向と目されている。

以上のような市場環境に入ると単純なボリュームゾーンは存在しないことになる。企業にとって利益確保できるゾーンを絞り切れず、経営決断を遅らせる要因にもなっているのがこの市場構造の変化だ。単純なボリュームゾーンが存在しない今後は業界を挙げて方向性を示すことは難しい。ここを押さえればなんとかなる、といった最大公約数的な確かなものがないためだ。以前は業界単位で方向性を示し、底上げ活動をする取り組みが奏功した。市場全体が拡大し、企業経営も多少負けていてもなんとか挽回できたのがこの頃だ。パイが膨らんでいる最中のため、同業他社のモノ真似・後追い経営や、極端にいえば弱小企業でもおこぼれを頂く等で凌ぐことができた。

だが今後は業界単位で最大公約数から方向性を導く取り組みは通用しづらい。「この辺りに油田がありそうだから、みんなで掘りあてよう」というボリュームゾーンがどの業種も急速になくなり、マーケティングという需要を掘り当てるマスのアプローチ手法は限界を迎えつつある。群れてみんなでいい思いができるような時代は終焉したといえる。今後は各企業が油田を独自に見つける姿勢が必要になる。モノ真似・後追い経営では全く通用せず、「個々の企業が独自に考えていく能力が必要」といわれる所以だ。


2022年1月1日配信