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人とくるまのテクノロジー展2022

リョービ編

国内外の企業484社が出展し、4万3665名が来場した。

2022年5月25日から神奈川県のパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2022 YOKOHAMA」展示されたダイカスト製品を2回に分けて紹介する。一回目はリョービ編。

リョービ、環境負荷減に応える大型アルミダイカスト技術


 リョービ(広島) のブース(写真2)は世界共通の目標となる「カーボンニュートラルの実現」を意識した展示構成で、リサイクル性、軽量化などアルミダイカストがいかに環境負荷低減に応える素形材であるかを訴え、これに沿った開発中の技術及び製品や量産開始した新規製品を披露した。

(写真2)リョービのブース

(写真3)

EV/PHV用バッテリーケース」

 展示したものは開発中のバッテリーケース、e アクスルケース、モーターケース等の電動車向け部品(写真3~8)や新車種への採用が拡がっているボディ・シャシー製品、さらにGDスクイズ工法によるナックル等の厚肉高強度製品など。

(写真4)

開発中の「EV/PHV用バッテリーケース」(全長1,650×1,450mm、重量16㎏)。アルミダイカスト製フレームピースで構成。

(写真5)

参考出品となる「e アクスルケース」はFSW(摩擦撹拌接合)とレーザ溶接を使用したピース(インナー、アウター)構造一体化が特徴。

(写真6)

e アクスルケース」のウォータージャケット部断面。

(写真7)

「テーパーレスモーターケース」のウォータージャケット部断面。

(写真8)

開発中の「インバータケース2ピースFSW接合」。

 カーボンニュートラル実現へ向け、同社は2030年にCO2排出量を2018年比で47.4%削減し、2050年にカーボンニュートラル達成を目指す。同時に産業廃棄物削減も進め、リサイクル率99%以上を掲げる。ブースに設置された大型ディスプレイでは脱炭素に向けた同社アルミダイカストの貢献度を、新塊アルミ製品や鋼板に対比し紹介した(写真9)

(写真9)

脱炭素に向けたアルミダイカストの貢献度を、新塊アルミ製品と対比。

 素材置換が一段と激化するなか、鋼板とのせめぎ合いも始まっており、今後需要が右肩上がりとなるバッテリーケースもその一つ。ブースでは開発中のものや量産開始したものを展示した。前述したダイカスト化のメリットを落とし込み、開発中の製品として参考出品したのは「EV/PHV用バッテリーケース」(全長1,650×1,450mm、重量16㎏)だ(写真4)。鋼板プレス成型のバッテリーケースは多くの部品を溶接や接合し、耐食のため塗装しているが、対してリョービはリブや肉厚などダイカストの形状自由度を活かし、冷却水路の一体化をはじめ各種部品を一体化、軽量性と剛性を両立できることを示した。

(写真10)

日本で量産開始した「HV用バッテリーケース」

開発中の同バッテリーケースは、アルミダイカスト製フレーム(試作は砂型)にアルミ押出材による底板と車体取付レールの構成で、フレームと底板の接合においては接合速度の速いレーザ溶接(開発中)を採用する。アルミダイカスト製フレームは内側骨格部材や隔壁等を一体化成形により部品点数を削減、配線や冷却水路の一体成形化も可能だ。量産では合金材料が割れにくく耐食性と熱伝導度に優れた髙延性ダイカスト用合金を使用し、型締力3,500t級のダイカストマシンで鋳造する予定。同じ形のフレームを2つ使用し、全長約1,650mmのフレーム部分を形成する仕様となる。フレーム合わせ部は凹凸形状の組み合わせによるボルト結合により、アセンブリ状態の強度・剛性を確保。また蓋面はタッピング加工による蓋取付穴とシール材溝の仕様で、シール材溝は液状ガスケットや成形ガスケット用の全周溝になる。なお、ブースでは昨秋から量産開始し、今春発売の新型車に搭載された「HV用バッテリーケース」(写真10)も展示した。

 リョービの複数部品一体化によるユーザーへのコスト削減提案は近年、力を入れるボディ・シャシー部品でも拡がっている。その代表例がホンダ・シビック(2021モデル)に搭載される「フロントサブフレームASSY」(18.8kg)(写真11)で、米国、中国、タイの3拠点で同時立上げに成功した製品になる。この実績が評価され、「サブフレームのグローバル同時展開技術の確立」として日本ダイカスト協会の2021年度浦上賞を受賞した。

(写真11)

ホンダ・シビック(2021モデル)で搭載される「フロントサブフレームASSY」

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