スピード最重視の中国ダイカスト市場
大型製品から中小型製品までプラズマ切断に注目集まる
Hypertherm Inc
2025中国ダイカスト展示会でブースに見学者が殺到
2025中国ダイカスト展示会のブース全景
ギガキャストに端を発したアルミダイカスト製品への注目度が増し、大型製品だけでなく中小型製品までダイカスト需要増の期待が膨らむ中、一段と生産効率を上げ、納期短縮を求める声が高まっている。スピードを最重視する中国ではギガキャストで実績のあるプラズマ切断を、ダイカスト製品全般の後工程で採用しようと関心が高まってきた。
これにともない米国の大手プラズマ切断装置メーカー、ハイパーサーム(ニューハンプシャー州)の中国法人、ハイパーサーム上海トレーディングは7月16日~18日に開催された「2025中国ダイカスト展示会」(上海)に、ダイカスト製品のゲート・ランナー切断で採用が進む「XPRシリーズ」を展示し、多くの来場者を集めた。
高温のプラズマアークを利用して切断するプラズマ切断装置は複雑形状や厚肉製品、曲線も簡単に短時間切断できるのが特徴。装置一台で鉄、アルミ、ステンレス鋼と多様な材料や多品種少量生産にも適している。さらに初期投資を抑え導入できるほか、初心者でも短期間で使いこなせるため、世界的に人材不足のなかで中小企業でも即戦力として扱いやすい。
今回の展示会では協業先となる中国国内のロボットシステムメーカー各社が中小型ダイカスト製品用の「XPR170」を搭載したシステムを実演、その効果を紹介した。来場者からは中国の新エネルギー車用ダイカスト部品の切断装置として関心を集め、「採用へ向けたテスト等の依頼が40社超の企業から受けた」(同社)としている。
XPR170
XPRのプラズマ切断
ロボットシステムに組み込んだXPR170の実演をみた来場者からは「大型ダイカスト部品製造時、精度が高い切断を求めるとサイクルタイムが長くなる傾向があるが、この製品はそのバランスが良く取れている」、「プレスによる切断だと簡単に製造部品の形状を変更できないがこのシステムだとその制約がなくなる」とコメント。
一方、ハイパーサームの協業先となる中国国内のロボットシステムメーカーからは「今回の出展を通じて、ダイカストの後工程の一手段としてプラズマ切断に優位性があることを業界の中で広く認識してもらえた」、「費用的優位性を持って中国国内の鋳物業界でスマートマニュファクチャリングを推進することに当たり、このプラズマ切断ロボットシステムが貢献しうることを認識してもらう足掛かりになった」と期待の声が聞かれた。
ハイパーサーム上海は「この展示会はギガキャスト製品の切断で築き上げた高精度で対費用効果が高い技術を、ダイカスト製品全般に適用できることを業界の方々に理解してもらう機会となった」と満足感を口にする。そして「中国国内では砂型や重力鋳造など異なる鋳物でも柔軟対応でき、高速でかつ仕上がりがきれいな切断システムへのニーズが高まっていることが再確認できた」と話す。
さらに今後の取り組みについて、「中国の自動車メーカーでは軽量化のためマグネ合金の採用が進んでおり、切断面が酸化せず、かつ亀裂が入らない切断方法の採用が検討されている。このニーズに対し当社ではウォーターインジェクションプラズマなど様々なプラズマ切断方法を提案し、各メーカーの要望に合った切断方法を見出すテストと共同開発も行っている」としている。
なお、ハイパーサーム社は24カ国に自社拠点を持ち、日本での営業拠点はハイパーサームジャパン(大阪市西区、TEL06-6225-1183)が担う。自動車構造部品で鉄鋼からダイカストに置換する流れを捉え、今年5月から日本市場のダイカスト向け本格販売を開始した。
ロボットシステムに搭載したXPR170
「XPRシリーズ」は水プラズマ切断など様々なプラズマ切断が可能で、かつIoTなど自動化機能を有した最上位モデルになる。業界一の切断品質が得られる独自技術を搭載した革新的なプラズマ切断装置で、ロボットシステムに搭載されることが多い。消耗品の使用量を低減し運用コストも大幅削減できるのが特徴。熟練労働者への依存を最小限抑え、生産性向上が可能。
そのなかでXPR170は最大出力が170A、ピアッシング能力が「アルミで25㍉、ステンレス鋼で22㍉、軟鋼で40㍉」のプラズマ切断装置になる。メンテナンス性では片手でトーチを取り付けられるトーチコンセントで交換が素早くできるほか、電極交換が簡単な構造。電源装置に搭載された WiFi でモバイルデバイスとネットワークモードに接続でき、複数のシステム監視と操作ができる。
世界的に物価高の環境下にあるなか、同シリーズはランプダウン保護機能・自動トーチ保護機能を搭載し、消耗部品の長寿命化を実現、ランニングコスト低減に寄与する仕様になっている。例えば自動トーチ保護機能では電極寿命によるトーチの致命的な損傷を防止できる。