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特別寄稿第

AI時代を支えるCast-Designerゲート・システム設計機能


〜ダイカストは新しい時代へ〜

   AI時代を支えるCast-Designerゲート・システム設計機能


鹿取事務所

鹿取貞夫

Cast-Designerは製品のFEM形状に対して最適のゲート・システム(ランナ、ゲート・システム、オーバフロー)を生成する。AI時代に入った今も、Cast-Designerによるゲート・システム設計は鋳造生産に不可欠であり、新時代への最善の備えでもある。「AIによる鋳造解析」と一般的な鋳造「シミュレーション・ソフトウエア」とが将来競合する可能性がある。しかし、Cast-Designerのユーザーは、AIへの巨額の投資も、データを蓄積するまでの長い年月も待つ必要もない。

AIは特定加工機種の、過去の型締力、溶湯の注入温度、注入速度(量/時間)、放熱率のデータの集合実績を製品形状に当てはめ、一定範囲の製品形状に適合する条件を抽出する。その対象は、形状バリエーションが一定範囲の製品に限られる。新しい製品には、新しいゲート・システムの設計が必要である。たとえば、ギガキャスト製品の鋳造条件データは未だ蓄積されていない。新規開発製品の大部分はその形状に応じたゲート・システム設計が実行されてはじめて熱流動解析と、以降の全ての解析が可能になる。

(図1)Cast-Designer は、フル3Dゲート・システムの複雑なゲート・システム設計の作業負荷を軽減する。設計結果は金型設計に直接使用できる。 

●EV時代にエンジンはマイナーな自動車部品

 

ダイカスト産業は自動車部品生産に依存してきた。エンジンとトランスミッションとその付属物がその対象だった。EV車ではエンジンはモーターとインバーターのeAxleに変化し、トランスミッションは消える。ギガキャストの対象としてリア、ミドル構造、フロントがあるが、その形に定型はない。鋳造解析はその都度過去にデータの無い形状に対処しなければならない。AIはギガキャストのデータの蓄積を待たなければ機能しない。

Cast-Designerは熱流動解析と以降の解析の時間を短縮をする。Cast-Designerの一連のシステムが時短に向けて働く。複雑な形状に対して試行錯誤を繰り返し、長時間を費やせば、コストを増大させ、市場参入に遅れる。あるいは、製品検査を含む他の工程時間を圧迫し、甚大な損失を招くおそれがある。


●Cast-Designerによる時短

 

先ず、Geo-Designerが僅か3分間~5分間でダイカスト、重力鋳造の事前の解析をする。価格は130万円と安い。製品の質量分布、熱分布を予測し、型締め力のガイドとして投影面積を示し、抜き勾配、スライドを要する箇所を示すなど、ユーザーに有用な情報を提供する。その決定的な効果は、これらの情報に基づいて以降の設計解析工程を最少労力、最少時間に止めることができることである。シミュレーション・ソフトウエアとしてこれほど費用効果の高いものはおそらく稀なはずである。

Geo-Designerによって設計解析の道程を見定めた後、Cast-DesignerによるFEM解析を実施する。Cast-Designerの「ファスト・メッシュ」は要素数を150,000~数十万に減らす。その結果、計算時間は大幅に短縮される。それでなお精度の高い解析結果を得ることができる。「QuickCast」機能は何度もポストプロセスを繰り返すことを防ぎ、設計の妥当性を保障する。Cast-Designerの「アドバンスCFD」はFEM熱流動解析にFVMがカプリングされており、摩擦抵抗を含め非常に高速な計算を実行する。Cast-Designerは高い機能と経済効果に拘らず、その価格は他のハイエンド・シミュレーション・ソフトに比べ遥かにリーゾナブルである。

オプションのGA、パーティクル最適化法等も、技術環境が整えば、高度の計算の基礎となる可能性がある。Cast-DesignerのDOEはExcelを使うより簡便である。


(図2)Cast-Designer では、QuickCastが金属流動パターンの高速解析手法を提供する。標準的なFEM/FVM解析手法よりも高速。それで妥当な結果が得られる。インナーゲート設計などの事前分析に使用できる。

(図3)QuickCastを使用すると、システムは最適な内部ゲートのレイアウトとサイズ制御を検索して、最適な流れバランスを実現できる。

(図4)Cast-DesignerのGA法によるゲート・システムの最適化。ガス多孔性の問題を排除するゲートの最適形状と寸法を見つける。

●ビジネス・モデルが大きく変わりつつある

 

エンジン時代には仕事は上から下へ流れてきた。EV時代には水平分業が容易に進む。自動車に限らず、工業製品生産者は世界の全ての供給者からベストの部品を採用する。ケイレツは分解する。

車台プラットフォーム、モーター、インバータ―、バッテリー、内装、ECU(電子機器による制御)、映像装置など、それぞれの産業がヨコに繋がり、多種の組み合わせが起きる。電気機器メーカーから鉄鋼メーカーまでが自動車メーカーとして名乗りを挙げる。

何れの生産企業も、それぞれが生産する部品は円滑な製造加工が可能かどうかを確認しなければならない。どの企業にとっても、Cast-Designerは製品の開発と安全を確保する必須のツールとなる。


●日本のEV時代はもっと先かもしれない???

 

日本は世界市場で今もハイブリッド車(HV)で成功を収めている。その間、米国では全ての車種の電子機器の不具合、内外装の不良が増加した。EV車も新しさのゆえに同じ悩みを持つ。それにもかかわらず、テスラ社は販売台数を着々と増やしている。

EV生産の増減と、ダイカスト、重力鋳造へのCast-Designerの貢献度の増大とは別の問題である。なぜなら、部品鋳造はEV向けであれ、HV向けであれ新規設計と解析は欠かせないからである。ギガキャストが一例である。定型はあり得ない。

エンジン車用部品の需要が漸次減少して行く。大手メーカーは設備能力の譲渡、削減、廃棄に動き始めた。今なら譲渡益があるが、結局需要は縮小するので、産業全体にとっては大きな負担となる。一方、テスラや多くの中国自動車メーカーにはその負担は無い。

今、欧州が安価な輸入EV車に対応するため、むしろ中国への投資を積極化しつつある。日本車はその逆に撤退し続ける。結果として、数年後の日本はCO2削減の世界の要求をどう受け止めるのだろうか?

(図5)ギガキャストと自動車用途への応用。 

●自動車に依存しない鋳造産業

 

自動車の部品点数は減少する。需要を失った鋳造産業は新しい分野に進出する必要がある。振り返れば、日本は家電をはじめ多くの産業分野を輸入製品に奪われてきた。これは回復できないものだろうか?自動車についても、電池、モーター、電子部品、制御装置、タイヤ、シャーシーなど多くの分野で技術開発、競争力回復、成長の余地がある。

Cast-Designerはこれら全てが共通して必要とする技術を持つ。FEMをベースとする解析と設計の技術である。鋳造にはCast-Designerは勿論、Cast-Designer WELDは大型構築物の溶接シミュレーションを提供して、車両、船舶、航空機、建設機械、建築、発電の溶接設計シミュレーションにを数週間、数か月要する時間と労力を数時間、数十時間に短縮する。

日本には30年の空白期間があった。原因は思考を停止し、分析と予測を怠ったことにある。EVでの立ち遅れもその結果である。反省をするなら、何よりも人材育成の投資を先行させる必要がある。Cast-Designerはエンジニアの教育、育成に役立つ。人への投資こそが企業の最大の資産を築き上げる。

以上


鹿取 貞夫

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〒222-0002 横浜市港北区師岡町1062-3

メール:katori@imold.jp

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2024年ダイカスト新聞1月30日号掲載

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