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「人とくるまのテクノロジー展2019」見学レポート②

                 非鉄金属及び鉄成形編(



藤岡エンジ、新マグネ合金でチクソ―モールド成形

チクソモールド成形によるマグネ部品を量産し今年21年目を迎えた藤岡エンジニアリング(岡山)は靭性に優れたマグネシウム合金としてカーボン強化マグネ合金(UH合金)〔写真6〕を紹介した。曲がる、耐力向上、巣の軽減をメリットとする新合金はAZ91Dにカーボンを加えたもので、これによりAZ91Dに比べ流動性がよく、内部欠陥が減少するがコストは2、3割高いという。

藤岡エンジニアリングは1998年にマグネ生産を始め、JSW製成形機の650~220㌧までを5台揃える。マルチマテリアル化が加速し、素形材の代替も激しいため同社はマグネ合金開発にも注力、用途開拓に力を入れている。

写真6

同社の採用するチクソ法はマグネ合金チップを原料とするため溶解炉が不要で、合金種類の変更も比較的容易なのが利点。射出圧力が高く射出速度が速いため、表面品質向上と薄肉精密成形が可能で、ダイカストと比較し溶融温度が低いため、寸法精度や機械的性質で優位性があるとみる。

なお、同社はマグネ以外では亜鉛ダイカスト生産としてヒシヌマ製を1台、樹脂成形では日精樹脂製を4台保有。機械加工では約90台のマシニングを保有し、アルミダイカスト部品の加工も手掛ける。また本社工場近隣の久世工場( 岡山県真庭市)では樹脂及びマグネ用金型の設計、製作を行なう。

日本製鉄、対アルミで鉄を軸にした軽量化コンセプトを披露

「従来の限界を超えた軽量構造と耐久性を進化させた、鉄を主体とするマルチマテリアル化」を打ち出すのは日本製鉄。同社は「従来のガソリン車の各部品から電動化により増加する電池やモーターに至るまで、あらゆる主要部材に精通した素材・サービスの提供が可能」とし、グループの総合力を結集し、次世代車向け素材部品に鉄の存在感をみせつける構えだ。

展示会では次世代自動車の構造コンセプト「NSafe®-AutoConcept」〔写真7〕を披露し、鉄鋼素材のみの適用に限定し約30%の軽量化を達成した車体設計ソリューションを提案した。アルミを適用したオールアルミ車の質量に匹敵し、他の素材を用いることなく軽量化し、衝突安全性向上にも寄与することを目指す。


写真7

またブースでは次世代車における鉄鋼素材の可能性を最大限引き出す部品構造やそれを具現化する加工技術を提案。各部品(電池、モーター、エンジン/駆動、パネル、骨格、シャシー)向けに製品や技術も紹介した。性能、コストともアルミを凌駕するというのは開発品として展示した「高強度軽量フロントロアアーム」。従来の開発品は780MPa鋼板(3000g)だったが980MPa鋼板を使用し26%減の2200gを達成、アルミ鍛造品と同等の重さになった。フローコントロール成形により成形難部位の伸びフランジ部、パッドバーリング成形によりバーリング部の成形性を確保し、高強度薄肉化を実現した。


同社は部品構造の設計条件に踏み込んだ提案に力を入れる。具体的には引張り強度が2.0GPaまでのハイテン等の素材を部品性能に応じて選択し、必要特性を担保しつつ部品構成する板厚の低減や部品統合を図っていく考え。さらに電動車両のバッテリー構造では車体骨格の構造コンセプトのノウハウを活用し、耐食性と耐火性に優れた鉄製構造コンセプトを開発している。

ニッパツ、超ハイテンで鉄の領域を守る

「鉄の領域を他素材に奪われないように提案中」というのはニッパツだ。開発した超ハイテンを使用した「超軽量薄型フロントシートフレーム」〔写真8〕は従来の鉄製に比べ10%の軽量化を実現。11180Mpaと980Mpaの超ハイテン材を採用し、各部品を薄肉化。背もたれのフレームは従来比で56mm薄型化し、後席居住空間の拡大に貢献。ヒップポイントも26%減の171mmになりEV等の車室内高さに制限がある車種にも対応している。

写真8

さらにボルトやナットを廃止し、レールの組付けをレーザー溶接に変更し軽量化を実現した。部品形状の最適化は鉄鋼メーカーと共同で強度試験時の応力分布から成形解析を行なった。CFRPや樹脂に比べ量産コストで勝てる、とし同社開発品の量産(月産1万超)実績も出ている。