WEB SPECIAL

ダイカストと標準化


ダイカストは標準化が遅れている!?


同業といえども製造業の生産ラインはどこも似通っているようにみえて、意外と違いがある。なかでもダイカストメーカーは独自の味付けが大変バラエティに富み、個性が強い。標準化商品(設備)では対応できず、他の業種に比べ特別仕様の比率が高いのもこのためだ。「ダイカスト業界は標準化が遅れている」として、樹脂やプレス向けの設備業者がこれをビジネスチャンスに参入するケースが近年増えている。だが早々と撤退を余儀なくされるケースも多い。樹脂等で進めてきた標準化に則った考えではダイカスト向けに全く当てはめられないからだ。

ある樹脂向けの設備業者は「ダイカストメーカーは中小といえども比較的規模があり、粒が揃ったところが多い」と話す。その上で「このため標準化・効率化関連でビジネスチャンスがあるとみたが、調査すると個人商店的なところが多く、各企業によって要求が大変細かい。このニーズに合わせた商売は当社ではとても採算が合わない」と苦笑いする。他業種からみて効率化が遅れていると見られがちだが、ダイカストは溶湯を扱う上、工程が複雑なことが簡単に標準化できない原因でもある。

いま成形部品ではCAEによるシミュレーションを活用し、最適化した製品が相次ぎ誕生している。その一方、各ダイカストメーカーのラインに合わせた設備の最適化は口でいうほど簡単なものではない。単体ではなく、「システムとして機能できるかをソリューションし、エンジニアリングできる」ことは21世紀型納入業者の理想形で、これに沿った取り組みを始める設備・装置及び鋼材メーカーも出始めている。「ユーザーは各工程における提案より、連動したシステムでの提案を求めている」とした需要が背景にある。

本来、システムとして機能できるかは、その設備を導入した企業(ユーザー)が考えなければいけないことではある。だがユーザーはあくまで自社のラインについてしか知らないわけで、同業他社の様々な情報と比較検討し最適化することはなかなか難しい面がある。その点、納入業者は各ユーザーに出入りしていることが強みで、その設備が関わっている問題について多くのデータを持ち合わせている。ユーザーが設備業者に頼るのはこの点だ。ユーザーにとってはライバルでもある同業他社と難しい技術的問題についてデータ共有することはできない。その悩みのデータを最大公約数的に持ち合わせているのが設備、鋼材等の納入業者だ。

ユーザーにとって悩みのデータ共有において、同業他社との触媒の役割を担っているのが納入業者ともいえる。企業秘密など様々な社外秘情報はもちろん表に出せないが、最大公約数的なデータとは活用の仕方次第で大変価値があるものだ。現在は異なるメーカーの機械のデータを接続し、連携させることが難しい状況にあるが、経産省は「他社の機械やシステムとつながること自体が企業の競争力向上への手段となりうる時代が目前に迫っている」とみる。企業間の協力・連携関係を強め、相互にデータ共有化が進めば、いままでにない全く新しい化学反応が生まれることが期待される。


2020年10月13日配信