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「人とくるまのテクノロジー展2019」見学レポート②

非鉄金属及び鉄成形編(



フタバ産業、試作のバッテリーケースと次世代排気システム                   

排気系システムで国内トップシェアのフタバ産業は環境対応車へのさらなる貢献として試作した「バッテリーケース」と「次世代排気システム」を展示〔写真9〕した。PHEV車の課題としてバッテリーの大型化は排気管レイアウトへも影響するため、同社の得意とする排気システムとバッテリーケースを1セットで考えた構造を提案。バッテリーケースは超ハイテンとホットスタンプを用いた軽量化を検討する。

写真9

また同社はボディや足回り部品にも力を入れ、ブースでは鋼板プレス成型と加工技術による開発品として「高強度ボディ骨格部品」〔写真10〕も展示した。高強度材の冷間1470MPaで部品廃止・板厚低減により量産品に比べ13%の軽量化を実現。加工技術は成形シミュレーションにより、しわ、割れを予測し最適な成形法を確立した。

写真10

このほか今回展示していなかったが同社のボディ部品ではフロントピラーロア、サイドシル、センターボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネルインナー/アウター、ルーレール等。エキゾーストマニホールド、マフラー等、排気系システム及び内装部品ではインストルメントパネルリインホースメント、足回りではフロント及びリアサスペンションサブフレームリアアクスルビーム/ハウジング、トレーリングアーム等を手掛け、燃料系では樹脂成形によるフュエルタンク、キャニスター、フュエルインレットパイプを製造する。


住友重機、ボディ構造の革新“STAF„によるバッテリーケース

軽量化とコストダウンの両立を図り、さらに約10年前から衝突安全性基準の強化が世界的に始まり、完成車メーカーはプラットフォーム戦略の見直しを迫られてきた。このニーズに対応するべく、「自動車ボディ構造に革新をもたらす日本発の独自技術」として住友重機械工業が提案するのがSTAF(スチール・チューブ・エアー・フォーミング)だ。

STAFは1500MPa以上の高強度とフランジ付き連続異形閉断面による高剛性化を実現、用途としてA/B/CピラーやフレームやメンバーをSTAF材にしたEV用バッテリーケース等〔写真11~13〕での採用を目指している。

写真11

写真12

写真13

近年、ホンダ・オデッセイのAピラーでハイドロフォーム(液圧成形)による鋼製パイプが採用されるなど動きが活発化、このハイドロフォーム、ホットスタンピング(熱間成形)を超え、鋼製パイプをより進化させる工法としてSTAFは誕生した。STAFは鋼管を高圧空気で熱間成形する仕組みで、一体成形及び薄肉化による部品点数、溶接の大幅削減が可能で、さらに工程もシンプルなため低投資、省スペースでできるのが特徴。住友重機械工業は工場内にSTAF試作機を設置、ユーザーへの提案に乗り出している。

鋼板の加工方法も様々なバリエーションが出現し、厚みの異なる鋼板を溶接して成形する差厚鋼板と、金型内で部分ごとに焼入れを調節し、強度の違いを作る差強度鋼板の2つが大きな流れになりつつある。一方、STAFは鋼板の断面形状を連続可変にする技術で、世界にはない日本発のオリジナル技術となる。

STAFは従来のような板材を金型成形し、それを接合して閉断面のボディ骨格を作るのではなく、もともと閉断面である鋼管を利用する点が最大の特徴になる。工程の流れは鋼パイプをプレス機の金型にセットし、ワンパックで「通電加熱→ブロー成形・フランジ成形→本体成形・焼入れ」を行なう。これにより高精度なフランジ付き連続異形閉断面を成形加工できるのだ。

フレームを組み立てる際に不可欠なフランジ(つば状の部品)を、フレームと一体成形でき、例えばAピラーのようなフランジ付き閉断面を作る場合、従来工法のハイドロフォーミング(液圧成形)ではフランジが完全に別体部品となり、部品点数3~4点、ホットスタンピング(熱間成形)ではフランジ付き板材を張り合わせるため部品点数は3点必要だが、STAFはフランジ一体成形で部品2点(アウターパネル含む)になる。アッセンブリ剛性は同等に保ちながら部品点数削減と溶接点数削減によるコスト低減が図れるのがSTAFの魅力だ。

鋼製パイプ材でフランジ付連続異形閉断面構造を一体成形できるだけでなく、直線形状でも緩くカーブした形状でも製造できる。ハイドロフォームより高強度、ホットスタンピングより高剛性で、部品点数削減と約30%の軽量化が可能だ。用途はA/B/Cピラー、バッテリーケース(フレーム、メンバー)、バンパーレインフォースメント、フロントサイドフレーム、ルーフサイドレール等。