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特別寄稿第

Cast-Designerで人材資本を強化


〜ダイカストは新しい時代へ〜

  Cast-Designerで人材資本を強化


鹿取事務所

鹿取貞夫

AIへの期待が大きい。しかし、AIを使うのは人間である。人材を育てない限りどんなシステムも企業も停滞と弱体化を避けられない。優れた人材の育成は資本の拡充を意味する。今、人手不足がすべての社会領域で解決不能の困難を惹き起こしている。解消する道は一つである。人材資本を増やせば、企業と社会の最大の問題を解決できる。

Cast-Designerはダイカストと重力鋳造のために、ゲート・システム設計と流動解析、物性解析をする。目前の生産事業を強化するツールであると同時に、企業に人材資本を蓄積する。シミュレーションは可能な限り合理的な生産過程に近づくための段階的なアプローチである。計算は便宜的に有限要素法を使う。プログラムの背景には、ナビエ・ストークス方程式から始まる多数の数理、原理、法則、統計技法がある。Cast-Designerのユーザーはこれらの工学技術に接する機会を得る。その実体験を通じ、事業の開発、発展に参加する人材に育つ。

「失われた30年」では、上流から降りてくる定型的な仕事に熟練し、豊富に経験を積んだ技術者が迅速に優れた製品を生産した。安全性検査を省いても事故を起こさない製品ができた。その裏で正しいエンジニアリングが納期短縮の犠牲になった。CAD設計部門、解析部門、金型製造部門、鋳造部門が壁を作り、人を分断してきた。ケイレツや下請け、孫請けのタテ組織では当然のように情報が分断された。設計、解析、鋳造の知見が分断され密接に繋がっていないため、工程シミュレーションは形式だけとなった虞れがある。

EVが経済構造を変える

 

EVへの移行は、金属加工は勿論、電子機器、光学機器、化学、電池、モーター、電動機器、機械、鋼材など産業全域に変革を惹き起こす。エンジンからモーターとインバーターの産業構造に適応しなければならない。モジュラー生産体制と部品点数の減少によって、既存設備、既存事業の変換を迫られる。開発力、開発スピードに劣る企業の命運は危うい。この時、何ものにも優先するのは人材の確保である。人材の絶対数には限りがある。高い所得を誘引とし人材が企業間、企業内部で適所に移動することが必要であり必然である。企業は人材育成の投資に躊躇してはならない。

Cast-Designerはテスラ社のギガキャストで先駆的働きを示した。前代未聞の巨大で複雑なダイカスト製品は、その設計段階で製品が必要な品質要件を備えているかどうかを確認する必要がある。それには想像を超える試行錯誤が必要なはずである。Cast-Designerはその時間と労力を大きく節減する効果を発揮した。Geo-Designer(事前解析ソフト)は製品形状に対し僅か数分間で質量分布等の解析結果を示す。本番解析工程であるCast-Designerによる精密な解析と結果へのアプローチ時間を節減する。Cast-DesignerのSmartRunner、QuickPostなどそのゲート・システム設計と高速の熱流動解析が時間と労力を軽減した。Geo-DesignerとCast-Designerは営業・受注から始まる各部門が互いにオーバーラップする効果をもたらす。

日本の産業は復活する

 

EVで日本はテスラ、BYDに後れを取っている。今、日本の自動車メーカーは作れば売れる好況にある。しかし、これは偶発的、例外的な原因に支えられている。コロナ後であることと円安である。これらの効果は永続しない。輸出先の中国で日本各社は撤退、縮小を余儀なくされている。米国は輸入車への優遇措置を縮小している。国内需要の拡大を予測することは難しい。

本田はカナダ、トヨタは米国にそれぞれ2兆円の投資でEVの生産を進める。中国は今や日本を越える自動車輸出国であり、タイはいずれアジアのデトロイトの地位を得ると言われる。インドも後を追う。日本は世界の自動車開発の拠点になれるのだろうか、サプライ・チェインの中核になれるのだろうか。

EV車は関わる主要事業は、電池、e-Axsle、自動運転システム、電気動作システム、光学センサー、レーザー・システム、画像処理システム、プラットフォームおよび単一部品からなる。どれ一つとっても、日本が世界の先頭に立てないものは無い。OEM(組立)も世界から優れた部品を集め、市場で特異あるいは高級な車両を成功させることができる。

人材資本の充実、人材の流動化、AIの活用、ロボットの活用によって日本の産業の復活は可能になる。障害となるのは「失われた30年」をもたらした、変化を嫌う産業社会組織である。しかし、これもケイレツの逐次分離、タテ型の下請け方式からヨコに繋がる協業、合従連衡、技術を繋ぐブロック組織に変化することが予想される。 

未来が見えてきた


核融合発電の商用化も視野に入ってきた。30年代にはミニ設備が電気自動車(EV)用の充電ステーションに活用される。自動運転システムでトヨタ、マツダが開発を統合、共通化し投資を7~8割節減するという。各社はミリ波センサーの内製も企画する。

エヌビディアが革新的新製品GPIを発表し、生成AIおよび自動運転を促進する。PCにも搭載されて、その能力を倍加させる。システムを促進し、大量高速計算が容易になる。生成AIがさらに飛躍的に進化する。すでに我々の日常を動かしているAIがあらゆる文化と技術の分野で進歩を速める。

中国がNEVの台数で世界市場をリードしている。その自動運転技術が一気に世界に先行する可能性もある。中国の新エネルギー車の開発期間は12〜18カ月とされ、伝統的な自動車メーカーの半分以下という速さである。しかし、これらは国策によって支えられている。日本の産業力が中国に劣っているわけではない。 

鋳造産業が目指す先

 

自動車部品数が大きく減る。不要となった部品の市場で収益を求めるのは至難である。新市場、新分野、新製品へ事業の転換を図らねばならない。しかし、国内外で商品への需要が拡大しているとは言えない。商品の需要量が減るなら、付加価値を高め、新需要を創り出さねばならない。このとき、蓄積された人材資本が力を発揮する。

OEM企業はサプライ・チェインを閉じた系内ではなく世界に開くだろう。オープンなら開発時間を短縮できる。e-Axsle、冷却装置、コクピット、パワートレインなど各種モジュール、個別部品のほか、単純複数部品集合にもチャンスがある。新燃料車、ディーゼル・エンジンと関連部品にチャンスが訪れる。自動車以外の分野では、建機、農機、ロボット、製造・加工の自動装置とそれらの部品がある。

ギガキャストは経験と学術では実現できない。「シミュレーションがドライブする設計と製造」の意味が容易に理解されるようになった。Cast-Designer設計解析技術の延長として大型構築物の溶接設計解析(Cast-Designer WELDの利用)も考えられる。機械や製造装置の投資は金額もリスクも大きいが、人材資本強化の投資は金額もリスクも小さい。蓄積された人材資本は変革に対応して企業を護り、発展へと導く。Cast-DesignerやCast-Designer WELDはそれに貢献できる。


以上


鹿取 貞夫

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メール:katori@imold.jp

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2024年ダイカスト新聞2月29日号掲載

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