魚岸精機工業(株)

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多品種少量ニーズに合わせ、ダイカスト用途拡大へ向け

コスト50%減の小ロット向け低廉化金型の開発注力

金型メーカー、魚岸精機工業(富山県射水市、魚岸成光社長)は国際公約SDGs(持続可能な開発目標)に沿ったダイカストの可能性を広げる一環として、従来に比べ納期及びコストの50%減を目指した小ロット向け低廉化金型の開発に力を入れている。多品種少量ニーズに合わせた金型寿命のものを安く早く作れる仕組みを構築し、金型の付加価値向上につなげる狙いだ。

 2021年の今年、創業75周年を迎える同社はニーズの多様化からダイカストが活かせる分野が広がることを見据え、これまで砂型や試作対応となっていたものをダイカスト化する取り組みを積極化する。例えばダイカストマシンの型締力500㌧クラス向け金型では熱処理レス等の工夫をし、通常納期の3カ月から1カ月半を目標に据える。金型寿命は短くなるがコスト・納期を踏まえた費用対効果の視点からユーザーニーズに切り込む考えだ。この取り組みは3年計画で進めており、最終年度の2021年度末までに一定の成果を上げることを目指す。

 この取り組みを始めたのは顧客の問題(困り事)解決の一環からだ。同社は川下ニーズとその背景を次のように捉える。(技術部門)は技術者不足と検討時間・作業工数の不足、フロントローディングによる準備負荷過多、(購買部門)は金型費用低減ができない、金型部品や材料の高騰、国内外での品質・工程管理、(生産部門)は良品率悪化、稼働率低下、金型低寿命化。こうした背景から同社は近年、従来型の技術集団から技術と知恵を融合した知的集団へのシフトを強め、既成概念にとらわれない「型破り先進企業」をスローガンとしている。

 今回の事業に先立ち、2014年から始めた事業には「UPDO」(魚岸プロダクト・デザイン・オファリング)がある。ユーザーの製品設計から関わり、ダイカストの鋳造不良率低減や金型原価低減などトータルシステムでの提案をする取り組みだ。「UPDO」は型期間内のスケジュール前倒しで早期量産に持っていくことを目指し、企画・検討段階から顧客と打ち合わせし、同時に解析専門メーカーや海外提携メーカーとコラボして迅速に金型製作に移行できる仕組み作りを提案。具体的には製品設計(3Dモデル)・素材図・CAE(流動、凝固、歪み解析)・金型構想など前段階のいわばコンセプト設計から受託し、鋳造不良率低減や金型原価低減を提案する。その受託データ転用で安価金型製造及び工期短縮の実現、試作トライ及び素材鋳物測定(非接触)、さらに金型保全など製品企画から金型構想、金型製造、メンテナンスまでトータルシステムで「ユーザーの利益確保ができるようにする」。

 日本の取引慣習では下請側の企業がユーザーに提案することを生意気と捉え、拒否反応も根強い。ただ産業界が激変するなかで大手メーカーをはじめ多くの企業がその方向性を迷っている面もあり、「外部から知恵を拝借したい」といった空気感も漂い始めている。この流れを同社はいち早く捉え、日本のダイカストメーカーが持つ蓄積したノウハウを宝の持ち腐れにすることなく、「昇華できるお手伝い」に邁進する。なお、昨年、中部経済産業局から地域未来牽引企業に選定された同社は、海外拠点では2004年に設立したタイ金型工場(63名)がある。