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リアルデータ資源大国の日本のものづくり

今後はダイカストも収集力と応用力で企業間格差

IoT時代においてデータが競争力の源泉だ。バーチャルデータを巡るデータ競争「第1幕」はグーグルを始めとしたGAFAが大規模なプラットフォームを形成、日本企業は大きく水を空けられている。

だが今後、競争のステージはバーチャルデータの活用に加え、リアルデータを巡るデータ競争、第2幕へ移行中だ。リアルデータとは設備機器の内部に蓄積されているデータで、日本はこのリアルデータを大量に生み出す現場力が世界でも最高水準にある。リアルデータはまさに「21世紀の人工資源」で、その資源大国が日本といえる。

技術の蓄積といったリアルデータを持つ日本企業は世界に先駆けAI及びディープラーニングを製造現場に落とし込める土壌がある。「インダストリー4・0」への大きなアドバンテージが日本の企業群にはあるのだ。

特許出願及び取得件数でも日本は常に世界3位内に入っているが、これを活かし製品化した企業比率は1割超と低い。日本にはイノベーションの種は非常に多くあるが、技術を活かしきれず宝の持ち腐れになっている実態がある。こうした実態を踏まえると、これまで日本の企業に眠っていた人工資源を有効活用できる時代が幕開けしたといえる。

一方、製造現場の「リアルデータ」活用を巡っては、情報産業の強みを活かして「ネットからリアルへ」と進む米国と、製造業の強みを活かして「リアルからネットへ」と進む欧州がそれぞれグローバル戦略を展開している。これら欧米企業の次なる狙いは日本だ。

経産省の報告書によると「欧米企業はネットワーク化を通じて、日本が強みとする製造分野で設備・機器の内部に蓄積されているデータの独占を狙い、これに対する何らかの対応が必要」と警鐘を鳴らす。

欧州事情に詳しいダイカスト業界関係者も次のように話す。「欧米企業はコンセプト作りが上手いが、現場の具体的事例作りが下手」。日本のようにある程度の水準に達する中小企業が揃っていないため、フィードバックできるほどのデータ収集力が構築できないというのだ。欧米企業が世界有数に整備されている日本企業に狙いを定めるのもそのためだ。

前述の関係者はこうもいう。「日本の企業は技術情報を何でもクローズする習性があるが、オープンにしていいものとクローズするものを分別する作業を早急に行なうべき」とし、「自社では持て余していたこともオープン化することで思わぬ相乗効果が生まれる」と話す。日本企業独特の病巣は何かを切り捨てる必要性が増しても決断できず、中途半端に進むこと。ドライに割り切り、オープン化とクローズ化のメリハリがいま求められている。


                                                                2020年4月8日配信