WEB SPECIAL

人とくるまのテクノロジー展2022

リョービ編(2)

従来、ボディ・シャシー部品は鉄の領域になるが、アルミダイカスト化への門戸は欧州を中心に拡がってきた。日本は世界トップレベルの鉄鋼インフラがあり、遅々としていたが、軽量化ニーズの高まりからリョービは2013年から本格的に鉄からの代替化を目指した取り組みに乗り出した。薄肉複雑形状化、そして肉厚高剛性化と相反する2方向の技術開発へ向け、軸となるのは膨大なリアルデータを基にしたCAE解析等による最適設計化だ。

ここからボディ・シャシー部品の重要特性となる「衝突時の衝撃吸収のための破断伸び確保」や「SPRセルフピアスリベット」接合性の確保」に適した独自合金を開発。さらにダイカスト工法ならではの深いリブ構造により、軽量化とねじり剛性を両立させた。これまでアルミダイカスト化した製品はショックタワー、トンネルトップ、キックダウンレール、サイドメンバー、ピラーポスト、サブフレーム、「カウルトップ」(写真12、13)、ドアウインドウプレート(写真14)、ナックル等で、開発中のものでは「リアエンドポスト」(写真15)がある。

(写真12)

手前は日産自のSUV・アリアに搭載される「カウルトップ」(4.9㎏)。右手奥はホンダ・シビックの「フロントサブフレームASSY」(18.8kg)。

(写真13)

日産自のアリア向け「カウルトップ」の表側。

(写真14)

「ドアウインドウプレート」(1.2㎏)は独自開発合金RMH-TMHを使用。

(写真15)

参考出品の「リアエンドポスト(板金接合サンプル)」。

 次世代車部品のアルミダイカスト化とユーザーの開発期間短縮をサポートするため、リョービは量産技術要件を織り込んだ試作開発の体制を整備している(写真16、17)

(写真16)

試作品「クロスカービーム用部品」(手前)と破壊試験による結果(奥)。

(写真17)

体感コーナーでスチールとアルミの曲げ剛性を比較。

(写真18)

写真手前からダイカスト試作金型による製品、積層砂型による製品、総切削による製品。

 従来は開発の後工程で実車・実機を用いて品質・性能を作り込む流れだが、同社はより前工程へリソースをシフトする取り組みに注力。開発期間短縮のために前工程でデジタル(MBD)を活用し、ダイカスト要件、機械加工要件等を机上検証しながら品質・性能を作り込み、量産コスト低減へつなげる提案を行なっている。ボディ・シャシー部品のアルミ化をサポートする同社の開発体制は次のようなものだ。①設計(仕様と設計空間から最適形状を設計)、②解析(鋳造CAE解析による生技性を織り込んだ形状)、③試作車部品(事前評価のための試作車部品の提供)、④試験・評価(スペック評価に必要な試験実施)。ユーザーの要求品質に合わせ最適な試作工法を提案し、ブースでは参考出品としてダイカスト試作金型、積層砂型、総切削による製品を並べた(写真18)

また同社ブースで展示したそのほかの製品(写真19~25)ではGDスクイズ工法による厚肉高強度製品やトランスアクスルケース、熱間鍛造品等になる。

(写真19)

GDスクイズにより、左側が量産する「リテーナー、ディファレンシャルクロスシャフトベアリング」、右側が参考出品「デフキャリア」。

(写真20)

GDスクイズによる「リテーナー、ディファレンシャルクロスシャフトベアリング」(3.14㎏)。

(写真21)

GDスクイズによる参考出品「デフキャリア」。

(写真22)

EV用「61MA MIDDLEケース」(3.3㎏)。800t機で日本生産、日立ASTEMOに納入。

(写真23)

「HV用トランスアクスルケース(9.8㎏)。

(写真24)

グループの東京軽合金製作所で低圧金型鋳造により製造した「ハイブリッド建設機械用モーターケース」。

(写真25)

グループの豊栄工業で製造したトヨタFCVのMIRAI向けアルミ熱間鍛造品「高圧水素用レギュレーター」。

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