2000年代のダイカスト生産推移

リーマンショック、東日本大震災、コロナ感染拡大の3有事で底みる

コロナ感染が影響し、2020年5月の国内ダイカスト生産量は前年比61%減の3万2千㌧にとどまり、2000年代で最低の月産量となった。この数値は08年9月に発生したリーマンショック及び2011年3月発生の東日本大震災の直後を下回り、さらに減少率も急激かつ過去最大の落ち幅を記録したことになる。ダイカスト生産は2月の国内感染発生から2カ月後の4月から前年比39%減と急減し、さらに5月は過去最大水準の減少幅を記録。これは08年9月発生のリーマンショック直後より早い急激な下落率となる。ただ5月を底に徐々に生産回復も出始めており、ダイカスト用途の9割を占める自動車向けがけん引する。トヨタやマツダも8月の国内生産が当初計画水準まで回復すると発表、これにともないダイカスト生産量もリーマン後よりは回復が早いとの期待感が現時点では出ている。

2000年代に入り国内ダイカスト生産量は過去最高と過去最大の落ち幅を記録するかつてない受注量急変環境にあり、急激な落ち込みを見せたのは過去20年で前述したリーマンショック、東日本大震災、今回のコロナ感染拡大の3つの有事直後になる。リーマン直後のダイカスト生産量は18年10月が前年比14%減、11月が26%減、12月が39%減、翌09年1月に53%減ときて、リーマン発生から6カ月後となる09年2月に62%減の3万9千㌧と2000年以降で最低の月産量を記録した。また東日本大震災は発生月に急減したが回復も早く、発生から6カ月後の8月には前年比を上回るまで急回復した。東日本大震災後の推移をみると発生月の3月が前年比27%減の6万5千㌧弱、4月が30%減の5万7千㌧弱、5月が30%減の5万2千㌧で、6月には9%減の7万2千㌧、7月は2%減の8万6千㌧と減少幅は大幅に縮小。8月には9%増の7万7千㌧と8カ月ぶりの前年比増を記録した。

一方、2000年代の国内ダイカスト生産量のピークはリーマンショック前の数年間だ。初の100万㌧台に乗ったのは2005年で、そこから上昇基調が鮮明となり、ピークは07年に記録した115万8千㌧になる。6年連続の過去最高を更新、生産額も7317億円にまで達した。08年に発生したリーマンショックを境に09年は前年比30%減の75万㌧、生産額も4千5百億円で90年代の水準に戻った。なお、バブル全盛の1988年(平成元年)は70万5千㌧、生産額は4863億8千万円だった。当時の車向けが全生産量の71%(46万8千㌧)だったが、1990年代から車比率が一気に高まり、2005年には8割を超え、現在9割近くまで占めるようになった。環境問題がクローズアップされた時代背景から車の軽量化、リサイクル化が進展、素材成形としてダイカストの採用が拡大した。さらに車の電子化により自動車産業の裾野が一層拡がったことが大きい。電機関連メーカーが相次ぎ車部品事業を拡大した影響から従来、電機関連向けを主力としていたダイカストメーカーのなかにも必然的に自動車関連が増加する構図となった。なお、2019年のダイカスト生産は前年比5%減の102万3千㌧で、12月までの生産量は5カ月連続減と月を追うごとに下落し、2020年の5月実績まで10カ月連続減できている。

2020年8月1日配信