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2020年5月 国内ダイカスト求人状況推移


新型コロナウイルス感染の影響が国内ダイカスト動向の指標となるダイカスト求人にも5月実績から克明に表れてきた。2月の国内感染発生から3カ月経過し、自動車メーカー等の生産調整で減産基調が鮮明となったことでダイカスト各社も人員抑制に移行している。


 ただ過去からの求人推移をみると2018年8月を頂点に既に減少傾向に入っていることがからもわかる。2018年後半から国内ダイカスト生産が緩やかながら右肩下がりに入ったことが原因。背景には米中貿易摩擦をはじめ世界経済・情勢の不透明化があり、今回のコロナを機に減少傾向に勢いが増した格好だ。


国内ダイカスト求人実績は2005年1月から本紙独自で毎月集計している素形材産業で唯一の求人統計になる。厚労省求人情報をもとに集計した5月の国内ダイカスト関連求人募集状況によると募集件数は前月比20%減の342件で2カ月連続減、採用数が18%減の629人にとどまった。前年比でみると件数が34%減に対し、採用数が33%減になる。


国内ダイカスト生産は2016年から上向き、2018年上期まで上昇基調にあったが下期から前年比を下回り始めた。この生産推移と並行し、求人数も月により上下動を繰り返しながら徐々に減少していった。減少しながらも求人数が一定水準を維持しているのは品質保証等で以前より手間がかかる作業が増えていることが大きい。近年は自動化による省人化を進めるダイカストメーカー及び金型メーカーが増えてきたが、ダイカスト製品の高難度化からユーザーの品質要求が格段に厳しさを増し、さらに人手でないと融通が効かない作業も依然多いことも影響している。

そのなかで直近の2020年3月実績までは募集件数514件、採用数934人と前月比3%上回り、3カ月連続増となる水準を維持してきた。だが2月の感染発生から3カ月経過し、減産基調がはっきりとみえたことで各社とも人員抑制にシフト。人員確保は早急に出来るものではないため、企業にとっては需要動向の見極めに慎重にならざるを得えず、求人活動のタイムラグが生じた形だ。

5月の求人状況を地域別でみると、前月実績に対し中部東海地区が24%減の116件、関東(山梨含む)が17%減の78件、関西が9%減の50件にとどまり、これら主要3地域を合わせた募集件数は全体の71%を占めた。ほか地域では県別で広島が多く、これは岐阜、愛知、埼玉に次ぐ県別4位になる。

また国内ダイカスト求人動向を振り返ると、2008年9月のリーマンショック発生時は翌月の10月に求人数は前月比2割減と即反映された。リーマン後は月を追うごとに大幅減少し、2009年5月は件数19件、採用数26人と過去最低を記録。回復に転じたのは2010年9月で、発生から丸2年かかった。

一方、過去最多を記録した2018年8月実績は募集件数669件、採用人数1339人に達し、地域別偏りもなく全国各地で上昇した。生産量増ペースに人手が追いつかない状態が続き、「賃金水準を段階的に引き上げても人手が全く集まらない」といった深刻な人材難にあった。採用人数は2017年8月から初めて統計開始以来の1千人台に乗り、その後も増え続け、2018年4月から初の1200人台、8月に1300人台と、統計開始から短期間で過去最大の伸び率を記録した。

なお、日本の人口は2040年代後半から1億人を割り込み、2060年頃には9千万人を割り込み、そのうち4割が65歳以上になるとの予測がある。15歳以上65歳未満の生産年齢人口も1990年代をピークに減少傾向が続き、就業支援や外国人労働者の受け入れだけではカバーできないスピードで人手不足が進行。中小企業白書によると中堅・中小企業数は2007年に420万社あったが、2027年には約350万社に減るとした試算が出ている。超少子高齢化といった人口構造上から、2020年代は人手不足に起因した倒産・廃業が数を増すことが予想されている。


2020年6月12日配信