(株)豊電子工業

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リーク検査装置事業に参入、新工場が2024年春稼働

バッテリー等の検査需要増に対応、売上100億円見込む


自動化システムを手掛けるシステムインテグレーターの豊電子工業(愛知県刈谷市、盛田高史社長)はバッテリーをはじめ自動車部品等でリーク検査需要が急増することを受け、リーク検査装置事業に乗り出す。新工場の増設と増員を図り、将来的に同事業の売上高として約100億円を目指す。リーク検査装置事業参入に向け、3月末にリーク検査装置等を手掛けるマルナカ(愛知県豊明市、中川貢社長)の株式を取得し、グループ傘下に収めた。同社とは2021年に業務提携した経緯がある。さらにマルナカの工場だけでは生産能力に限度があるため、新工場を刈谷市内に建設する。4月着工、11月完成、来春稼働を計画。

 

製造製品は市場投入を控える新開発品になり、既に複数のメーカーより引合いを受けているため、早急に生産体制を整える。新工場では当面、リークテスターに加え、同テスターで使用したヘリウムを回収、再利用するヘリウム回収機と回収したガスからヘリウムを分離し、ヘリウムの有効利用を図る同精製機を生産する。これら装置の販売により新工場における初年度売上高は15~20億円程度を見込み、マルナカの既存売上高20億円と合わせ計35~40億円が豊電子の連結売上に上乗せされる計算になる。世界的な需要増が期待できるため、北米で3カ所目となる工場建設も視野に入れる。

 

豊電子にとって第5工場と位置付ける新工場は本社工場に近接する同社駐車場に建設する。敷地面積1910平方㍍に、7億円を投じ1144平方㍍の建屋を設ける。稼働に合わせ新規雇用として当初は30人程度増員する構え。工場内には約1億円を投じて露点温度マイナス60℃のドライルーム(100平方㍍、高さ5㍍)を設置する予定。リチウムイオン二次電池など電動化に関わる部品製造では空気中の水分が阻害物質となり、厳しい低湿度環境が求められるため新設する。車載用気密部品として需要があるダイカスト製品をはじめ、「新規部品の実証試験の場」としてユーザーの研究開発を支援する考え。

 

ヘリウムの用途はリークテスト(漏れ検査)、溶接、分析、光ファイバー、半導体製造、医療機器等の製造業向けに幅広い。だが現下は世界的にヘリウム不足で価格が従来の8倍に高騰し調達が難航、今後も改善の気配はみられない。このヘリウム不足危機に対応し新開発したヘリウム回収機(販価1千万円)は検査に使用したヘリウムを80~99%回収でき、濃度管理を行なうことでヘリウム漏れ検査を安定的に行え、検査コスト削減が可能。特殊仕様のオーダーメイドにも対応する。またヘリウム不足に対応し、ヘリウムの代わりとして検出ガスにアルゴンガスを使用した装置の投入もいずれ行なう。

 

なお、傘下に収めたマルナカ(愛知県豊明市)はヘリウム検査機器で世界でも有数のノウハウを有する。製造するヘリウムリークテスターは微小な洩れ検出精度を誇り、主に自動車部品を手掛けるメーカーで採用されている。同社は1959年に工場の配管工事で創業し、1975年から産業機械全般の機器類を扱い成長。2003年からヘリウムを用いた微少洩れ検査機開発に参入、2008年に車部品の性能向上にともなう作動流体の高圧化を受け、超高圧液体洩れ検査機開発に着手し、2009年に山口大学、2011年に産総研とそれぞれ技術提携した。その後の2016年にヘリウム代替洩れ検査機、2021年に超高圧液体洩れ検査機をそれぞれ実用化した。高圧洩れ検査は高圧ガス設備など多大なコストを要するため、従来の高圧ヘリウムを使用する設備に比べ、安全性とコストの大幅削減が可能となった。

 

開発中の案件では次世代リークテスターとして検出ガスにアルゴンガスを使用することで、供給価格が高騰しているヘリウムを消費しない低ランニングコストの装置がある。アルゴンはヘリウムより分子直径が大きいため、ヘリウムが透過する材質のワークのようにヘリウムリークテスターで検査できないワークにも対応可能だ。さらにアルゴンは排気速度が速いため、ヘリウム大漏れにより検査工程がストップしていた課題も解決できる。また大気圧下でのリチウムイオン電池/全固体電池の洩れ検査装置の開発も進めている。